
EXPO'99見聞記(1999年5月下旬に書きました)
「人間と自然・21世紀に向けて」をテーマに、5月1日から10月31日まで開かれているEXPO'99、「中国'99昆明世界園芸博覧会」の会場は、昆明市の中心部から北東方向に、車で約15分いった金殿風景区にある。
会場の面積は218ha。と、書いてもピンとこないかもしれないが、メインゲートから一番奥まったところにある国際館までは、歩いて20分ほどかかる。それほど広い。会場は西南側に開けた山の斜面 を利用している。山の斜面といっても、スキー場にもならないゆるやかな斜面で、歩くのがキツイということはなく、ちょっとした起伏もそのままに利用していて、不自然に真っ平らに整備されすぎた会場よりも、逆に疲れない。どんなにデザイン的に優れていても、疲れる会場には閉口してしまう。多少雑でも、地形そのものを使ってあった方が、落ち着けるようだ。
入場料100元(約1500円)のチケットを買って、正面 のメインゲートを入ると、タラコくちびるの、園芸博マスコット、リンリンがお出迎え。金絲猴をモデルにしているが、オスかメスかは不明。半ズボン姿が一般 的だが、スカートを穿いたリンリンも見た気がする。オスとメスがいるのかもしれない。あるいは女装趣味があるのかもしれない。このリンリンは、会場内にはもちろんのこと、昆明市内のいたるところに立っているし、デパートなどでも土産としてぬ いぐるみとして売られている。
巨大な花時計から、「花園大道」という大きな通 りがドーンと続いている。パンジーなど、色鮮やかな花々が、絨毯を敷いたように広がっている。花で飾られたジャンク船や花柱が立つ。まるで夢のような世界。正直にいうと、どうせたいしたことはないだろうと、期待もなく訪ねたのだったが、これはなかなかいいじゃないかと、感心した。この美しい花園を維持するために、園芸博覧会のスタッフが、毎日手入れをしている。人件費が安い中国だからできることかもしれない。
それにしても、雲南にいる実感がなかなか沸かなかった。ここがあの田舎臭い雲南なのだろうか? 「秘境」と呼ばれてきた雲南なのだろうか? そういう感じが園芸博会場、昆明市内に滞在中も、ずっと抜け切らなかった。違和感ではない。単純な驚きだろう。たぶん私もすっかりお上りさん状態になっていたのだ。
会場内は、どこもかしこも、記念写真を撮る人たちでいっぱいだ。中国人も、記念写 真が好きである。写真を撮ろうとすると、必ず彼らの記念写真を撮っている姿がファインダーの中に入ってしまう。EXPO'99の隠れたテーマは「記念写 真」ではないだろうかと思うくらいだ。いかに記念写真を良く撮れるか、その背景としての展示物。展示物の人気度は、記念写 真の背景としてどうか?という基準になっているように見える。会場内には、レンタルカメラ屋もある。ちなみに売られているフィルムはコダック(だけ?)だった。
花園大道の先が世紀広場で、「花開新世紀」のモニュメントが立っている。その手前のひな壇では毎日25名ほどの音楽隊が演奏を披露する。日によっては、動物のぬ いぐるみを着て演奏する。もちろん、その時のコンダクターはリンリンだ。中国人観光客にはバカうけで、リンリンと記念写 真を撮るために、みんな順番待ちをする。そのために演奏はストップする。リンリンと肩を組んだり、抱き着いたり、なかなか記念写 真が終わらずに、楽団のメンバーたちも困り果ててしまう。でもサービスと割り切っているようで、嫌な顔はしない。
広場に面して、立派な中国風建築の中国館がたつ。館内には、各省、各自治区の部屋があり、それぞれが植物との関わりについて、個性的な展示をしている。地元でとれるキャベツ、トマト、キューリ、リンゴ、メロンなどの、一般 的な野菜・果物だけを展示している省もあれば、珍しい植物や盆栽、ドライフラワー、ハーブなどを展示している省もある。残念ながら、植物に詳しくないので、展示してある貴重な植物がどれだけの価値があるのかわからない。
中国館内で特に私が気にいったのは、ジオラマ風のサボテンの展示。シュールな風景だ。砂漠とサボテンだから、新疆か内モンゴルかなと思ったら、そうではなく、福建省の展示室だった。それと、吉林省だったと思うが、朝鮮人参を集めて作った長さ1.5mほどの巨大な朝鮮人参のオブジェ。とうぜん、この人参をバックに、みんな記念写 真を撮っている。中国館内では人気のスポットだ。台湾の部屋もあって、白やピンク色のランの花が展示されていた。
大温室、人間と自然館から、道を北にとると、各省、各自治区の室外展区で、それぞれが趣向をこらした庭園になっている。海南省の三亜にある有名観光地「天涯海角」の海岸。チベット風建築物、新疆のイスラム風建物、貴州の「黄果 樹」の滝をイメージしたらしい滝などなど。ひと回りすると、中国各地を旅した気分になれる。そのうえ記念写 真まで撮れる。実物よりも記念写真を撮るには都合よくできている。
人と自然館へ戻り、メインストリート「友誼路」を東に進むと、両側は国際室外展区で、各国の庭園や建物が並んでいる。中ほどに日本庭園があって、鯉のぼりがたっていた。庭にも白い玉 じゃりが敷いてあり、石灯籠がたっているが、何かが違う。形はまぎれもなく日本庭園なのに、そう見えないのはどうしてだろう? 光の違い? 空気の違い? 湿度の違い? 微妙に何かが欠けている。日本庭園は、日本にあってこそ日本庭園であるのだろう。ここでも中国人は、玉 じゃりを踏んで、石灯籠にもたれかかって記念写真を撮っていた。
日本庭園の向いにひときわ大きな建物。スリランカ館だ。階段を登って中に入ると、右側がセルフサービスのカフェになっている。スリランカには行ったことはないが、きっとミルクティーの「チャイ」は置いてあるはずだと思い「チャイ」を注文すると、「ありません」という。訳を尋ねると、中国人はミルクティーは好きじゃないので、紅茶しか置いていないのだそうだ。残念。しかたないので、ミルクなしの紅茶を飲んだ。ただ、スリランカ人のスタッフたちは、自分たちだけチャイを飲んでいるそうだ。ここでは、スタッフたちが、スリランカの音楽と踊りを2階のテラスで披露する。太鼓の音に合わせた、激しく力強い踊り。建物の大きさといい、この踊りといい、ずいぶん力が入っているなぁと思った。
テキサス館があった。中を覗いてみたが、広州製のTシャツやジーンズを売っていて、どこがアメリカなんだ? テキサスなんだ?と首をかしげてしまった。5月上旬、ユーゴの中国大使館がNATO軍に誤爆されたとき、昆明でも学生によるデモが1日だけあったらしいが、一部旅行者の間では、園芸博覧会の、このテキサス館が占拠されるのではないかとか冗談が交わされた。もちろん会場は平和そのもので、何ごとも起こらなかったが。
通りの突き当たりが国際館だ。正面入り口には万国旗がはためく。ここでは30元で「パスポート」を買える。もちろん本物ではない。各国の国旗と国名が印刷してあるページに、スタンプを押してくれるのだ。国によってはサインまでしてくれる。スタンプラリー用のパスポートだ。各国の部屋をまわって、スタンプやサインをもらえば、世界一周した気分になれるのだろう。なるほど、中国人にウケるアイディアではある。
北朝鮮の部屋では、「金正日」という名の真っ赤な花(ベゴニア)が飾ってあった。不思議な空間だ。「バスポート」を出して、机の前に座っていた男性に差し出すと、ササッとサインをしてくれた。日付けと、名前らしいものが書いてあった。
日本の部屋は、お金がかかっている感じがした。なん百本という切り花が部屋をうめていて、甘い香りが漂っている。とうぜんここも中国人に人気のスポットだという。
会場内のところどころに売店やレストランがあるので、予算に応じて飲食できる。お勧めなのは、中国館の裏にある大きなフードセンターだ。中国各地や外国の料理やスナックを楽しめる。ピザ、ハンバーガー、インドネシア風カレーなどもある。日本料理のカウンターもあった。寿司、うな丼、うどんなどが、20〜30元という手ごろな値段で食べられる。
国際館で「パスポート」を買い、各国の庭園をまわり、フードセンターで外国料理を食べれば、すっかり外国旅行をした気分になれる(のだと思う)。花は美しいし、気候は爽やかで、100元(現地の給料を考えると、2〜3万円の感覚だ)の高いチケットを大目にみれば、中国人の観光地の作り方も知ることができるし、なかなか楽しい博覧会ではないだろうか。
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