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 最初にお断りしておきますが、昆明に「クンミン・コロッケ」という名前の食べものがあるわけではありません。これはぼくの身近な仲間うちの通 称なので、昆明へ行って土地の人に「昆明油炸丸子(クンミン・ヨウヂャーワンズ)」とか「昆明炸肉丸(クンミン・ヂャーロウワン)」とか「昆明炸土豆丸(クンミン・ヂャートゥードウワン)」などと言っても通 じないとおもいます。ご承知おきください。

 で、そのクンミン・コロッケとはどんなものかというと、ま、「コロッケ」というよりはどちらかというと「フライド・ポテト」といった方が正確な趣の食べものです。

 お天気が好い日の下校時に、中学校の門のそばに行ってみましょう。運が良いと、後ろの荷台に中華鍋とコンロを積んだ自転車を引いたおばさんに出会うことができます。そーです、これが「昆明コロッケおばさん」です。おーっとぉ!もちろんこれもぼくたち仲間うちの通 称です。昆明に「昆明炸丸大娘(クンミン・ヂャーワン・ダーニャン)」とか「昆明炸丸大婆(クンミン・ヂャーワン・ダーポー)」などという人がいるわけではありません。さて、その昆明コロッケおばさんは、運が悪いと他の中学の校門に行ってしまっています。クンミン・コロッケの主たる消費層は下校時の中学生なのです。したがって、お値段もとうぜんとてもチープです。

 作り方はとても簡単。お玉を2個合わせたすき間に、フレンチ・フライよりやや小さめに刻んだジャガイモを挟んで熱めの油で揚げます。するとまん中がへこんだお椀形のコロッケができあがる。そのへこんだところにすこしの塩とたっぷりの荒挽きの赤トウガラシを振りかけてできあがりです。それを小さく切った新聞紙に乗せて、おばさんが手渡してくれます。アツアツの揚げたてのジャガイモに、かすかな塩味とトウガラシのピリリとした辛さと香りがマッチして、根っからB級グルメ志向のぼくの舌と胃袋には無上のご馳走と感じられるのであります。

 とにかく昆明コロッケおばさんは「クンミン・コロッケ」しか売っていないので、わざわざおばさんに「クンミン・コロッケ×個ちょーだい」と言うことはありません。ただ「来一個(ライイーゴ)」(1個ちょーだい)とか「来両個(ライリャンゴ)」(2個ちょーだい)とか言うだけでことたります。ですから、ぼくはいまだにこの食べものが現地でいったいなんと呼ばれているのかまったく知らないのです。

 これは日本でもまったく同じものがカンタンに作れます。深めの鍋に油を入れ、ちょっと熱いめの温度で揚げればいいだけです。中華のお玉 がなくっても、ふつうの玉杓子が二つあればだいじょうぶ。細く切ったジャガイモをかりっと揚げて、熱いうちにほくほくと食べてください。一味唐辛子は、最近はちょっと気の利いたスーパーなら韓国産などの種ごと砕いた唐辛子が買えます。ぜひお試しを・・・。

 じつはこの文章を書き終えてから昆明出身の女性にこの話をしたところ、「ああ、炸土豆丸(チャートゥードウワン)でしょ」と言われました。ちゃんと名前があったのですね。でも実物のかたちを考えると、「土豆丸」よりも「土豆椀」の方が正しいような気もします。 (東西)


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