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焼猪脚は読んで字のごとく、焼いた「トンソク」です。中国ではブタは「豚」と書かずに「猪」と書きます。足は、サッカーのことを「足球」というように「足」という字を使うこともありますが、日常的な口語では「脚」という字を使います。日本語の感覚だと「脚」はくるぶしから上の部分イメージしますが、中国語では、たとえば裸足のことも「赤脚(チージャオ)」と書きます。ですから、焼猪脚はけっして「焼いたイノシシのすね肉」でも「焼いたイノシシのもも肉」でもありません。ぼくたちが日本でも口にするあの「トンソク」を焼いたものなのです。
焼猪脚は、あらかじめ蒸すか茹でておいたトンソクをさらに炭火で皮がぱりぱりするまでこんがり焼きあげます。するとととても芳ばしくなり、おまけに残っていた毛も焼けこげてなくなってしまいます。そして、豆乳を発酵させたタレに香菜を入れたものをつけて食べます。 前回の「豆花米餞」が立ち食い状態で食するにもかかわらず、屋台ではなくいちおう店をかまえているのとは逆に、じっくり腰を据えて居座るべきトンソク屋はオープン・エアの路上食堂です。夏の夕暮れどきから深夜にかけて路上に椅子とテーブルをならべて、ビールを飲みながら焼猪脚をかじり、四方山ばなしに花を咲かせるのです。
焼猪脚は基本的に夏の食べ物です。緯度が低くて高度のある昆明は春城とよばれ、四季を通 じておだやかな気候だといわれていますが、その昆明にも冬はあり、雪が降ることもあります。どんなに美味しいトンソクでも、雪が降る中でビールを飲みながら食べるのはいかな中国人でも勇気がいるとみえて、さすがに冬の時期は店開きしないようです。
中国の珍味のひとつに鶏の爪があります。これを油で揚げて香料と醤油で蒸したものは飲茶の定番アイテムのひとつなので、飲茶ファンならご存知でしょう。日本人はニガテな人も多いのですが、中国の人は大好きです。中国では鶏の切り身というものは売っていないので、家庭で鶏料理を作るときでも市場で1羽丸ごと買ってきます。すると鶏の爪は家族で取り合いになるというのです。ぼくの知り合いの中国人女性は「だって鶏には足が2本しかないでしょう」と言っていましたが、彼女の話だとひとつしかないトサカは当然、もっと熾烈な競争をまねくのだそうです。
さて、豚は4本足です。2本から4本へと脚の数がたかだか倍になると、これほどまでに差があるのかとびっくりするほどその価値は下落してしまい、トンソクはとても珍味とよばれるような代物ではありません。むしろ、下品な食べものとして認識されているようです。ぼくは昆明在住の知り合いである盧さん一家の娘さんたちと毎晩のように焼猪脚を食べに行っていたのですが、昆明の夏もいよいよ本格的になってきたある日、盧さん一家のお父さんはぼくたちに、「もうそろそろ暑い季節になってきたので、焼猪脚のような不潔な食べものはやめなさい。ヘタをすると赤痢にかかって死にますよ。」と注意をされたのであった。
珍味といえば、中国は「白髪三千丈」の伝統の国なので、いろいろなものに関して表記と実体が著しくちがうということが多々あります。あるときぼくは「怪味蚕豆(クァイウェイツァンドウ)」というビニールパックに入ったスナックを見つけました。名前からしてなかなかに怪しげなその食べものの味は、じっさいに食べてみるとなるほどとても怪しくて、パッケージの中身の大半をぼくは捨ててしまいました。めずらしく表記と中身が見事に一致した例に、運悪く遭遇してしまったというわけです。 (東西)
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