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 雲南省は北に美食の地・四川省と境を接しているせいか、四川料理と銘打ったレストランがたくさんあります。じっさいに四川省出身の老板(ラオバン=経営者)も多いようです。また、昆明は香港からの観光客やビジネスマンが多いので、広東料理屋もけっこうあります。それは、雲南名物といっても、特筆するような食べものがそんなに多くないからかもしれません。たしかに雲南名物には、少数民族・・・たとえば西双版納のダイ族の料理などをのぞくと、ほかのところにも似たようなものがあるということが多いようです。そんな中で正真正銘雲南でしか見かけないもののひとつに、お米の粉で作ったうどん「米餞(ミーシェン)」があります。米粉(ミーフェン=ビーフン)と同じじゃないか、というご意見もあるでしょうが、ビーフンとは太さがちがい、食感にもかなり差があります。日本のうどんから"もっちり感"をぬ いたようなものを想像してください。


 過橋米餞(グォチャオミーシェン)はそんな米餞料理の王様です。さっぱりとした上品な塩味の鶏スープ・豊富な具の種類・たっぷりと茹であげたボリューム満点の米餞など、どれをとっても炒米餞(チャオミーシェン)や豆花米餞(ドウホァミーシェン)など他のB級グルメっぽい米餞料理とは一線を画する豪華さがあります。かといって、高級レストランでいただくようなものではありません(高級レストランやホテルのメニューにもあることはありますが・・・)。基本的には庶民の食べ物です。ぼくが足繁く雲南にかよっていた'88〜'92年当時、街のふつうの食堂でおソバが0.5〜0.8元で食べられたころ、街の食堂で食べる過橋米餞がだいたい1.5〜2.5元くらいだったと思います。普通 のおそばがかけソバだとすると、過橋米餞は天麩羅ソバか鍋焼きうどん・・・ってとこでしょうかね。


 では、そのふつうのおソバよりちょっと高価な過橋米餞とはどんな食べものなのか?現地で過橋米餞を注文したことを想定してシミュレートしてみましょう。


 食堂に入って過橋米餞を注文すると、しばらくしてまずひとつのかなり大振りなドンブリとお皿が運ばれてきます。大振りなドンブリには白濁した熱い鶏スープがたっぷり入って湯気を立てています。スープの表面 が黄色く見えるのは、熱く溶けた鶏の脂です。お皿の方には、薄くスライスした生の豚肉、雲南ハム、湯通 ししたニラやもやしなどの野菜が数種、中国ではめずらしくきれいに並べられています。店によっては、湯葉が並んでいることもあります。米餞が来るまでのあいだに、まず豚肉を「しゃぶしゃぶ」の要領でスープに入れて熱をとおします。豚肉にじゅうぶん熱が通 ったら、つづいてほかの具もスープに入れてしまいます。


 過橋米餞は雲南省南部の蒙自(モンヅー)というところが本場だとされ、昆明の街で見かける看板にもよく「蒙自式過橋米餞」と書かれていたりします。フツーの過橋米餞とどう違うかというと、具の中に「きしめん」のクズを油で揚げたような、まあ一種の「揚げ玉 」が入っているかいないかなのですが、知り合いから聞いた話だと、じっさいに蒙自へ行って過橋米餞を注文すると、この「揚げ玉 」は入っていないということです?!@*?


 さて、待つことしばし、やがて、これもかなり大振りなどんぶりに入って、茹であがった米餞が運ばれてきます。米餞は腹もちが悪そうなので、たくさん食べないとすぐまたお腹が減ってしまうからでしょうか、これはかなりの量 が来ます。あとは、この米餞をスープの中にドバッと入れて食べればいいのです。


 これまでの話だけだと、たしかに過橋米餞はただのおソバより豪華であるということはご理解いただけたかと思いますが、「超ゴージャス・・」というタイトルほどのことはないんじゃないか、と思われる方も多いでしょう。そう考えたあなた。あなたは正しい!「超ゴージャス過橋米餞」はこんなもんではありません。ふつうの「過橋米餞」が1.5〜2.5元くらいだったころ、10元もする「過橋米餞」が存在していたのです。これはふつうのおソバのゆうに10倍を越える値段であり、かけソバを基準にすると美々卯のうどんすきといったとこでしょうか?わざわざ雲南まで来ていながら、これを見逃す手はないでしょう。1.5〜2.5元の過橋米餞でも美味しいのだから、10元も出せばさぞや・・・、と思うのが世の常人の常。さっそく食べにいったことは、いうまでもありません。


 訪れてみた屋の店構えは、とくに見栄えがするものではなく、ごくありきたりの、しかもどちらかというと小振りの店構えでした。ぼくは友人を誘ってお昼過ぎころに行ったのですが、店内はほぼ満員という盛況ぶりです。ちょっと身なりの清潔そうなこの人たちは、当時昆明でも数が増えてきた個体経営者でしょうか。それとも、出張で出向いてきた、食事を会社経費でまかなえる人たちでしょうか。とにかく、ぼくでもちょっとビビる10元というお金をたかだか「うどん」に払える中国人というものを、ぼくはまったく想像できませんでした。


 そんなふうにぼくが店内のマン・ウォッチングをしているうちに、運ばれてきました、超ゴージャス過橋米餞が・・・。店構え同様、そのドンブリも皿もそんじょそこらの食堂でお目にかかるものと大差はなく、とくに見栄えのするものではありません。ドンブリに入って出てきたスープをちょっとすすってみましたが、これもそんじょそこらの過橋米餞とくらべて特筆するようなものではありません。驚いたのは、お皿に乗っかって出てきた「具」です。どこの過橋米餞にもついてくる定番アイテムはもちろん、「なまこ」「いか」(このへんは乾燥品をもどしたもの)「たけのこ」「しいたけ」・・・おまけに薄くスライスした生魚の切り身まで乗っかっているのです。なんという壮観さでしょう。およそ考えつくかぎり、手に入るかぎりの食材を網羅した観があります。これをいっきょにドンブリに放りこんで、はたして米餞の入りこむスキマなどあるのでしょうか?


 食べた感想はというと、まず、陸封された内陸の地・雲南で生魚を食べるということに、信州の山奥の旅館でちょっと黒ずんだマグロの刺身を食べるような気持ち悪さがありました。それに、「なまこ」はいくらなんでもミスマッチすぎます。思うに、この超ゴージャス過橋米餞のほかの過橋米餞との値段の差は、すべて「具」に凝縮されていて、店構え、器、スープや麺といった基本的味覚など他の要素にはまったく反映されていないのです。そのうえ、チープ・グルメに慣れきったぼくの胃袋には、この絢爛豪華、なんでもあり式ゴージャスさがまったく馴染まず、むしろこの分不相応な豪華さがなにかブキミで、ちょっと祝祭的な気分にひたりたいならともかく、おいしく食べるということだけなら1.5〜2.5元の過橋米餞で十分だと思ったものです。

 過橋米餞は、そのむかし、はなれの部屋で科挙の試験勉強をしている夫のために、その妻が消化がよくてしかも運んでいくあいだに冷めない夜食として考えだした、という言い伝えがあるそうす。そのはなれの部屋は池の中の小島にあり、運んでいくのに橋を渡っていかなくてはならず、それで「過橋・・・」という名前がついたのだというです。本当かどうかはわかりませんが、ただ、夜食にしては、このたっぷり層になった鶏の油はいかにも消化が悪そうに思えます。しかし、帰国後、栄養士の人にきいた話だと、鶏の脂肪はほかの肉類の脂肪より消化がよいのだそうです。やっぱり中国四千年の知恵はタダモノではない。

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 パスタ・マシンと米粉で、なんとか米餞を日本で作ってみようと挑戦してみた友人がいます。結果 は、なんどやってみても、ぼそぼその得体の知れないものが屑になって散らかるだけで、ついに麺状のものにはならなかったようです。なにか良い知恵のある方は、ご教示いただけると幸いです。(東西)


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