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雑多 メコン源流

 

 メコン源流までは、青海省の南西部に位 置する玉樹藏族自治州雑多から馬で2日かかった。 そこは4500m以上の高原で、チベット族がヤク・馬・羊などを飼い、移動用のテントで暮らしていた。
  ヤクの乳から作ったバターは食料・灯明、顔に塗れば乾燥防止のクリームになる。毛はテントの材料に、糞は燃料になる。高原の厳しい環境でも彼らが適応できるのは、特にこのヤクという家畜がいるからだ。

  案内人と私は、源流に近い草原にテントを張って一泊し、次の日、川をさかのぼっていった。しばらく行ったところで、案内人は「ここです」と言った。何のことだ?と私は思った。「源流はこの泉です」と案内人は言う。「泉」というより、単なる水溜まりにしか見えない。しかも川はもっと上流に続いている。ここで私と案内人は、口論になってしまった。
  「川の源流というのは、水の流れの最初の1滴をいうのではないのか?」と私は言った。「いや、ここから上の流れは、夏でさえ水量 が変わるし、冬になれば凍ったり枯れたりするんだ。でも、この泉だけは何時でも水が湧き出て、我々人間と家畜たちの貴重な水場になる。だからここが源流だと言うんだ」と、彼らは主張した。

  そこは、昔々龍が舞い降りたという伝説が残る聖山の麓にあった。私は、源流と言えば、地理学的な・科学的な源流しか頭になかったが、地元の人間には、そんなものとは全く関わりなく、命の源となる貴重な水を提供してくれる、その水溜まりこそが聖なる場所であり、彼らにとっての「源流」であることを教えられた。


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