Vol.5
8月7日、月曜日、曇り
去年、歯が痛くなって病院にいった話は、雲南館のエッセイVol.2で書きましたが、一年たってまた同じところが痛みだし、今、治療中です。けっきょく、去年の治療は完璧ではなかったようです。ある程度、痛みが引いたとき、病院に行かなくなってしまった俺が悪いのかもしれませんが。いや、原因は虫歯だったのですが、もしかしたら、去年の時点でそれはわかっていたことではないのか?という不信感が生まれてしまいました。というのは、去年の治療は、痛む歯ではなくて、他のところの歯垢をとったりするだけだったのです。まあ、終わったことはいいでしょう。
ところで、香港人から英語のメールが届きました。
「ハーイ。長い時間見なかった。あなたは、今、いかに? 雨期は、ここ元陽で、ちょうど終わったところ。そして日に日に暑くなり始めている。しかし、まだたいへん気持ちいい。もしトレッキングしたいなら、いい靴を持参してくれ。ボクは、たくさんの美しいルートをキミに紹介しよう」
彼とは今年元陽で会いました。名前をタムといいます。賓館に長いこと泊まっていて、一見日本人かな?とも思ったのですが、違いました。ハニ族の棚田を撮っているところに、シャンビン(甘い清涼飲料水)を片手に現れて、「元陽は気に入った」と言ったのでした。そのときも、ここにゲストハウスを作れたらいいなと言ってはいたのですが、ほんとうに作ってしまうとは思いませんでした。
まだ彼のゲストハウスをこの目で見ていないので、詳しいことはわかりませんが、メールによれば、ゲストハウスは、賓館から建水方向に200m戻ったところにある黄色い建物だそうです。なぜか、ゲストハウスの名前が書いてありませんが。そのうちにまた行く機会はあるので、今度、そこに泊まってみようと思っています。どなたか、泊まったという人があれば、教えてください。 ★★★★★★★★★★
そろそろ、またどこかへ行きたくなってきました。俺は根っからの旅人なんだなと思います。一ケ所に落ち着いていられない性分。移動している方が落ち着く感じがします。
移動する快感というものがあります。子どものころからそれは感じていました。父親の運転するバイクの後ろに乗ってどこかへ出かけたとき、バイクの振動で身体のネジが少しづつ弛んでいくようなリラックスした気分の中で、風に当たっていると、耳もとに音楽が聴こえてきたり、列車やバスや飛行機に乗っているとき、たいていの人もそうかもしれませんが、窓際の席に座り、ボーッとして外の移り変わり行く風景を見ているのは気持ちのいいものです。そしてそういうとき、なぜか、いいアイディアが浮かんだりするのでした。
移動すると、脳が活性化されるのかな? そう言えば、あれは中学生のとき習ったんでしたっけ? 「フレミングの法則」。コイルを磁場の中で移動すると、電流が流れるとかいうやつです。親指、人さし指、中指が、お互い直角になるように延ばすと、それぞれが、電流の方向、磁場の方向、移動の方向を表すとかなんとか、正確なところは忘れてしまいましたが、そんな法則を習ったと記憶しています。
移動しているとき、快感を感じたり、頭が良く働くということと、妙にぴったりと符合しているので、まんざらこじつけではないかもしれません。つまり、地球上の磁場のなかを脳が移動すると、電流が流れるということではないのでしょうか。脳がコイル状になっているのかどうかは、問題あるところですが。
そして俺にはあるイメージが、いつもつきまとっています。それは何かというと、川の、水の動きが鈍いところは、よどんで汚いのですが、流れているところは、きれいです。常に移動していると、さらさらと清流のように、精神状態もきれいに保てるのではないかと、都合のいい解釈かもしれませんが、そうイメージしています。
最近、iモードの携帯電話をはじめとして、モバイル・インターネット機器の普及率には目ざましいものがあります。移動しながら使える軽いモバイル機器は、これからのインターネット生活には欠かせなくなっていくでしょう。パソコンは、すでにインターネットでは、主流ではないとさえいわれています。どうしてこんなにもモバイルが早く普及するのかというと、人間の本能と関係あるという説もあります。
人類の祖先は------話は大きくなりますが------、アフリカで誕生し、地球上に拡散していきました。モンゴロイドの一部はベーリング海峡を渡って、アメリカ大陸まで達しました。そこ後も、人類は拡散を続け、今では、ロケットで、宇宙にまで広がって行こうとしています。
それじゃあ、どうして人類は移動したのか? 食料が豊富なアフリカをどうして離れたのか? それはよくわかっていないそうです。どうしても、移動せざるをえないような、もっと本質的なところに関わっているのではないか。移動することが、快感であるということが、人類の本能だからではないか。だから、移動してできるモバイル・インターネットが、これだけ急激に普及するのではないかという説です。
面白い話だと思うし、実際移動することの快感は感じているので、うなずける話ではあります。
移動せざるをえない。移動することは、本能なのだ。とすると、地に足が着いていないような、いつも移動していないとダメな俺の性質も、人類のたどってきた歴史からみたら自然なことであって、なんら後ろめたさを感じることはないのだ。よかった、よかった。ということを結論にして、今日のエッセイは終わることにしましょう。