Vol.44
2003年12月2日、火曜日久しぶりで快晴です。気持ちのいい日でしたね。俺はやっぱり晴れた日が好き。 ところで、今年7月2日、フランス・パリで開かれたユネスコの第27回世界遺産委員会で『雲南保護区群の三江並流』が世界自然遺産に登録されました。もうご存じの方も多いでしょう。 雲南の北西部に、怒江(サルウィン川)、瀾滄江(メコン川)、金沙江(長江上流)の三本の川が、ヒマラヤ山脈の造山活動によって生み出された大地の皺の間を、北から南へ平行して流れている地域がありますが、ここを『三江並流』といいます。 この自然遺産への表玄関として脚光を浴びているのが、雲南省の省都昆明やチベット自治区ラサからの航空便も就航した「香格里拉(シャングリラ)」です。元々「中甸」といいましたが、2002年5月正式に改名されました。 さすが、中国。ここまでやるか?と驚いたものです。 「シャングリラ」とは、1933年に英国の作家ジェームス・ヒルトンが発表した小説「失われた地平線」に出てくるチベットの山奥にある僧院「シャングリラ」(サンスクリット語で理想卿の意)に由来します。 今では「理想郷」「桃源郷」などの意味で使われる言葉になっています。 あくまでも小説の話なんですがね。「中甸」という地名は、個人的に好きでした。たぶん、「シャングリラ」は、地元の人たちにもまだ100パーセントは浸透していないと思います。 遺産に登録された地域は約1.7万平方kmあります。当然ながら人工衛星からでもない限り、三本の川を同時に肉眼で確かめることはできません。 『三江並流』には、梅里雪山(雲南最高峰6740m)をはじめ、白芒雪山など標高数千mを越える山々と、氷河、湖沼、森林が点在します。植物は6千種にも及び、貴重な動物も多く、生物多様性の象徴的な地域でもあります。その他、この電網写 真館雲南館でもすでに紹介している通り、チベット族、イ族、ナシ族(モソ族)、ヌー族などが住み、文化の多様性という面 からも注目される場所なのです。 俺はこの地域を数回訪ねていますが、山を見るためには、寒いですが、冬が圧倒的にいいですね。朝日を受けた梅里雪山の神々しさは、零下10度の寒さも忘れさせるものでした。 徳欽から瀾滄江の峡谷を下ったチベット族の村で、3階建ての土造りの堅牢な民家におじゃましました。窓が小さくて中は薄暗かったのですが、そこで出されたバター茶の美味しかったこと。そしてこの家の主人と話をしたとき、「雄大な風景がすばらしいですね」と言った私に、主人がしみじみと語った言葉も忘れられないものでした。 「ここは交通が不便なので、子どもたちも町の学校の寄宿舎に泊まりながら勉強しています。村は環境が厳しくて、貧しいところなんですよ」 実際、この村へ来る途中、週末家に帰る子どもたちがたくさん荷台に乗ったトラックを追い抜いたのでした。 そして、たとえば 怒江の貢山から香格里拉は、直線距離では100kmですが、直接横断する(山越えする)車道はないので、いったん南下し、六庫、大理など経由して、約800km迂回しなければなりません。 こんなふうに、交通が不便であったことが逆に、この地域の自然と民族文化がそのままの形で残されることになったわけです。 こういう村を見たあとで「シャングリラ(理想郷)」と聞いても、あまり実感がわきません。 シャングリラは、あくまでも小説の世界で、存在しないからこそ「理想郷」ではないかとも思うし。 麗江は、世界遺産になってから観光地と化してしまい、本来持っていた独特の雰囲気を失ってしまいました。ここも世界遺産に登録されてそうならないとは限りません。「理想郷」と改名したとたんに「理想郷」でなくなってしまってはもともこもないでしょう。開発が進み自然が失われてしまう本末転倒な事態にならないことだけは望みたいですね。それが自然遺産に登録された本来の目的でもあるのですから。 来週12月9日発売の「週刊朝日」に、この『香格里拉(シャングリラ)』の写 真と記事が5ページで掲載されます。電網写真館では、その前に記事だけ発表してしまいます。似たような写 真は、写真ギャラリーにも掲載してありますが、週刊誌もどうぞご覧ください。ご感想・ご意見、お待ちしています。 青柳 |
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