極楽トンボの日曜日 Vol.31

 2002年7月7日、日曜日、曇時々晴れ

 久しぶりのエッセイです。それにしても、今日は暑いですねえ。

 ちょっと古い話になってしまいますが、5月10日から24日まで、棚田を撮影するために全国をまわりました。(そのときの日記は、オリザ館『旅の空色2002』でどうぞ)

 東京に戻ったとたんに天気が良くなって、悔しい感じがしました。旅行中は、毎日といっていいほど雨が降り、トレッキングシューズはとうとう穴があいたらしく、水が入ってきて、一日中湿った靴に足を入れていたので、すっかりふやけてしまいました。

 ところで、天気はかんばしくなかったものの、こんなにすごい棚田だったのかと、新しい発見があったり、旅は充実していたといっていいでしょう。かなりなハードスケジュールだったので、最後はへとへとでしたが。とにかく、移動距離が長いということがありました。全国に散らばる、14ケ所あまりの棚田を、14日間でまわったので、「のんびり旅を楽しむ」という感じではありませんでした。

 ところで、今回「やっぱりなあ」と思うことがありました。それは、ある物を撮影したいために、前もってインターネットやガイドブック、役場の観光課などに問い合わせて調べたのですが、そのときは「ない」とわかったものも、いざ、現地にいってみたら、やはり「あるじゃないか」というものが、けっこう見つかったのです。それと、以前撮影した、棚田の畦道に立っていた石の路坊神のようなものが、村人に聞いたら、牛の霊を祀るものであることがわかりました。

 「やっぱりなあ」と思ったのは、つまり、現地に実際にいかないとわからないことがたくさんあるということです。あたりまえの話なんですが。インターネットもガイドブックも万能ではないので、最終的には、自分でいって確かめるしかないということです。俺は現場にいって確かめることが嫌いではありません。だから旅行が好きなんでしょうが。そして行く前から完璧にわかっていたら、逆に旅はつまらないともいえます。なにが起こるか、なにを発見するか、それがわからないからこそ面 白い。旅のだいご味は、そのへんにあると、俺は思っています。

 ところで、棚田の本の進行状況はというと、今、校正の段階に入っています。発売はあと1ヶ月後です。「日本の棚田百選」というタイトルで、小学館ショトル・トラベルのシリーズです。価格は1500円だったと思います。しばらくお待ち下さい。

 先月はすごかったですね。ワールドカップ。にわかサッカーファンが多かったといわれていますが、俺もその中のひとり。それまで野球と同様、サッカーにも興味はありませんでした。ワールドカップ期間中は、俺も人並みに試合のテレビ中継を見ましたが、終わってしまえば、それまでです。正真正銘の「にわかサッカーファン」です! (自慢してどうする?)

 お祭が必要なのかなと思いました。「一体感」「高揚感」を得るには、しかもこんなにも大規模なものは、難しい世の中になっています。人の興味はばらばらで、ひとつのことを話題にしてもりあがる機会は少なくなっているでしょう。俺ばかりだけでなく、サッカーが好きなんじゃなくて、お祭りの「一体感」や「高揚感」を感じることが気持ちよかった人たちはいっぱいいるはずです。

 ところで、自分の国だけじゃなくて、他の国を応援する日本人が不思議だ、みたいな記事が海外メディアで流れたようです。日本とイングランドがもし対戦していたら、おそらく、日本を応援する日本人よりも「ベッカム様」を応援する日本人の方が多かったなどということにもなっていたかもしれません。でも、ワールドカップにナショナリズムを持ち込むのは愚の骨頂です。

 サッカー選手の中には、自分の国ではなくて外国でプレーし、生活しているのも多いわけです。しかも監督が外国人なんですよ。ようするに、国の代表チームとはいっても、「国家」を背負っているかといったら、そんなことはないでしょう。ワールドカップ期間は、選手側にも観客側にも「国対国の闘いとして楽しもう」という、暗黙の了解事項があるだけではないでしょうか。

 選手たちに「国家」を投影して見るのは、なんだか危ない感じがします。だから日本人が、他国の選手を応援することは、むしろ正常な感覚だと思うのですが。

 とはいえ、サッカーでしか自己アピールができないような貧しい国の人たちは、また別 な感覚をもっているのかもしれません。「そんな甘いことをいうのは、あんたが、サッカーがだめなら他のもので、といえる、余裕のある国の人間だからだよ」という声が聴こえてきそうな気もします。

青柳 


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