Vol.11
12月15日、金曜日、晴れ
田毎の月
日本政府主催のインターネット博覧会(通 称 インパク)が、12月31日から来年の12月31日まで、1年間開催されます。インターネット上の、バーチャルな博覧会です。インパクのパンフレットにはこう書いてあります。「インターネットは、多数の中から最適の対象を探し出す便利さでも、真に革命的です。日本政府は、これを一段と普及し、誰もが楽しめるコンテンツを拡げるために、インターネットを活用したグローバル・イベント、インターネット博覧会(通 称:インパク)を開催します」
電網写真館「オリザ館」も参加することになりました。「オリザ館(アジアの棚田)」は、一部を手直しし、新しく英語のページを作ったくらいで、基本的には、今までのサイトをそのままパビリオンとして登録しました。審査はありましたよ。そして誓約書を書いて、住民票の写 しも送りました。そんなに難しい手続きではありませんが。
昨日、事務局から送られてきたメールによると、
1.森総理主演のテレビCMが12月15日から31日まで全国で放映されます。
2.森総理のポスターが JR各駅などにも掲出予定です。とのことです。
そのポスターの画像が、添付ファイルで送られてきました。それにしても、驚いたーぁ。参加する人間がこんなこと言ってはいけないのかもしれませんが(いや、参加する立場だからあえて言わせてほしい)、「なんだ、このポスターは?!!!」
「インパク」には「夢」とか「未来」とか、そんなイメージを抱いているはずなのに、このポスターにはそれを感じない。まるで選挙ポスターです。少なくとも、今、一番「未来」「夢」を感じさせない人物(森さん)を使うとは、最高の皮肉とも言えるし、ブラックユーモアさえ感じさせます。ある意味「インパクト」はありますね。
☆☆☆☆☆
さて、話は変わって、1週間前、ある知人に会った時、「今はどんな写 真を撮っているんですか?」と聞かれたので、アジアの棚田の写真集デモ版を見てもらいました。写 真をパソコンのプリンターで印刷し、表紙をつけて綴じたものです。
その知人は、中国雲南省の棚田の写真を見て、「これは、もう、棚田を撮ってる感じじゃないですね。なにか別 のものを見ている気がします」と言いました。これを聞いたとき、嬉しくなりました。
俺が、棚田にひかれる理由は、生理的なところに訴えかけてくる何かがあると感じるからです。8年前に、雲南で初めて棚田を見たときの衝撃は、今でも忘れません。単なる自然の造型だったら、俺は興味を持たなかったでしょう。人間が作ったところがすごいわけです。だから写 真がいいというよりも、棚田そのものが持っているエネルギーに圧倒されてしまうのかもしれません。
人間と自然との「せめぎあい」、あるいは、人間と時間との関係が、棚田の形や曲線に表れている。棚田を撮りながら、棚田以上のもの、それは人間そのものなのでしょうが、それを表現できたなら嬉しく思いますが、まだそこまでいっていないことは残念ながら自覚しています。
知人は、「水が張った田んぼには、何か特別 ひかれるものがあります」と言いました。また「田植え前の田んぼ全部に月が映る『田毎の月』を見ていると、気が変になるっていう話が、日本各地に残っているんですよ」と教えてくれました。そんな民話や言い伝えがあったとは知りませんでしたが、その感覚はわかるような気がします。この世とあの世を結ぶ瞬間。異次元空間への入り口がぽっかりと開いているような・・・。
こんな話しを知っている方、いませんか? 知ってたらぜひ教えてください。
ただ「田毎の月」を1枚の写真にすることはできないんです。どんなに田んぼの数が多くても、月はひとつしか映りません。それなのに、すべての田んぼに月が映るように思ってしまうのは、思い込みだと言い切ってしまうのもなんだか味気ない。その瞬間は確かに月はひとつですが、あたりを歩いてみましょう。すると、月は次々に田んぼを移動していきます。結果 的にすべての田んぼに月が映ることになります。それが「田毎の月」のイメージなのです。
俺は、バリ島の東部の棚田で、「田毎の月」を見ました。いや、「見ました」ではなくて、「田毎の月」の場合、「体験しました」と言った方がよさそうです。
青柳
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